〔施設の特色〕 ○障害者支援施設「航」(以下「航」とする)は、平成13年5月に同法人の運営する「横浜市釜利谷地域ケアプラザ」と併設して開設されました。施設は、京急金沢文庫駅から約2Kmの閑静な住宅街の中に位置し、緑が多く、野鳥やリス・狸などを見ることが出来る自然豊かな環境にあります。施設の敷地の隣には、地元小・中学校の通学路があり、地域の子どもや住民の日常的な通路になっています。 ○「航」は、施設入所の他に、短期入所事業、5ヶ所のケアホームや自立生活訓練ホーム、航作業分室の運営も行っています。法人としては、地域ケアプラザの他に金沢地域活動ホーム「りんごの森」を運営し、日中活動事業、生活介護事業、地域交流事業のほか、地域福祉に関する相談支援事業も実施しています。施設の基本理念・基本方針の実践に向け、法人全体で一貫した地域生活支援を実施し、地域福祉への貢献に努めています。 ○知的障害児・者の親の会や、地域作業所などから有志が自主的に集まり、障害者の地域福祉について勉強会を行ったのが、施設の運営法人「社会福祉法人すみなす会」の始まりです。法人名は古語「住み成す」を語源とし、障害のある人たちが誇りを持って、地域で自分らしく豊かに暮らすことを願い設立されました。 〔特に優れていると思われる点〕 ①地域への理解促進のための取り組み 施設機能の提供と地域の人々との交流を積極的に行い、施設及び障害者への理解促進に取り組んでいます。 ○毎年6月に開催している法人の恒例行事「すみなすフェスタ」では、同法人の「釜利谷地域ケアプラザ」や地域活動ホーム「りんごの森」と協働して、バザーや模擬店などを出店し、広く地域住民の参加を募っています。平成18年に開催された「創立5周年記念すみなすフェスタ」では、200名以上の地域住民の参加がありました。また、町内会に防災用の小型消火車を置くスペースを提供したり、プロジェクター、車椅子用の体重計など、備品の貸出しを随時行っています。 ○地域のリサイクルバザーなどに定期的に出店したり、地域のマンション管理組合との共催で講演会を開催するなど、地域住民や関係団体との交流を図り、利用者が地域を身近に感じられるよう取り組んでいます。地元町内会とは、とりわけ積極的な交流を行っており、お祭りには積極的に協力しています。夏祭りには職員が神輿を担いで協力し、施設がお神輿のコースに入っているので、利用者が神輿を担いだりして交流を行っています。また、平成15年より「地域防災協定」を締結し、併設の地域ケアプラザと共同で、防災用備蓄食料をストックしているほか、町内会と合同で実践的な避難誘導訓練を定期的に実施しています。 ○「航」の日中活動で収穫したサツマイモを、地元小学校に差し入れしたお礼に、小学校の行事に招待されたり、地元小学校と「航」の使用している畑が近かった縁で、おでんパーティを行い、それをきっかけに、小学生がクラス活動として施設見学に訪れるなどの交流を行っています。 ○また、利用者と職員が協力して、「航」近隣のスーパーマーケットのあき缶回収をしたり、通学路の枯葉掃除や雪かきなどを行っています。このような様々な取り組みは、施設および障害者への理解促進と障害者福祉の啓発となり、利用者の地域移行を推進するものとなっています。 ②事故防止と安全管理に向けた取り組みへの姿勢 ○利用者の障害の重度化が進むなか、医療依存度の高い利用者や、問題行動や逸脱行動など対応に配慮の必要な利用者の増加に合わせ、「事故予防が最大の支援」であるという施設方針のもと、「航」では、平成19年4月より「リスク管理委員会」を発足し、利用者の安全確保・事故防止と職員のスキル向上に向けての取り組みを始めています。 ○「リスク管理委員会」は年6回定期開催され、事故やヒヤリ・ハット事例の発生件数と内訳について統計を取るほか、ヒヤリ・ハット事例をもとにして実際の支援場面に活用する方法を検討したり、事故防止のマニュアル作成に向けた職員の状況調査を行うなど、様々な取り組みが行われています。
○サービスの質が一定に保たれるようにするためには、業務マニュアルを整備し、共有化を図ることが不可欠です。そのためには、現状に沿った内容にし、職員に活用されるマニュアルを整備することが必要です。また、継続性のあるマニュアルを整備するにあたっては、定期的なマニュアルの見直しが不可欠です。マニュアルがより身近で、活用されるものにするためには、職員全体で見直しを実施することが望まれます。さらに、マニュアルを周知徹底するためには、マニュアルを用いて職員研修を実施するなどの取り組みも必要です。すでに、職員から意見を募り、事故防止マニュアル作成に反映した実績もありますので、これらの取り組みを拡大していくことを期待します。 ③法人のネットワークを活かした、地域生活を意識できるような支援 ○ノーマライゼーションの原理に基づく法人理念「地域の中での普通の生活を支えます」を基盤として、地域移行を見据えた支援や、「航」においても地域生活が意識出来るように、法人全体で様々な事業に取り組み、その機能やネットワークを活かした取り組みが行われています。 ○「航」では、地域での生活により近い、生活単位を4~14名とできるだけ小さくしたユニット制を取り入れています。また、ケアホームや自立生活訓練ホーム、紙漉(かみすき)の作業スペースと販売を兼ねる分室などを運営しています。これらの機能・特性を活用し、相互に連携を図ることで利用者が段階的かつ効果的に地域生活へ移行する支援をしています。 ○「航」では、平成19年10月1日より障害者自立支援法による新体系に移行して支援を行っています。開所以来「日中活動支援」(デイ支援)と「居住支援」(ナイト支援)に分離し、平成15年度より日中活動に専門職員を配置し、支援を行っています。また、居住ユニットと日中活動のスペースは完全に分離されており、「昼間は外に出て活動し、夜は家に帰ってゆっくり休む」という生活が、「航」で実施されています。 ○「航」から地域移行を目指す利用者は、同区内の一戸建の住宅を利用した自立生活訓練ホーム「帆海(ほなみ)」で、小人数(4名)による地域生活を体験して、実際の地域移行に向けた生活訓練を行っています。多くの利用者が、この事業を経て地域移行した実績を持っています。 ○同法人で金沢地域活動ホーム「りんごの森」を運営し、生活介護事業や相談支援事業を通じて、地域で生活する障害者をサポートしたり、施設サービスを必要とする利用者に対して情報発信を行うなど、地域の福祉ニーズにきめ細やかに対応しています。また、現在、5ヶ所目のケアホームの運営を予定するなど、積極的に地域移行への取り組みを行っています。今後、法人全体の専門機能やネットワークを生かし、他の福祉施設や事業者とも連携して、金沢区全体の障害者福祉のさらなる充実を図っていこうという意向を持っています。 〔特に工夫や改善などを期待したい点〕 ①体系的な人材育成計画の策定を ○職員の資質向上のために新人研修や現任研修、人権研修を定期的に実施し、月1回の職員会議では、毎回テーマを決めてディスカッションやロールプレイ等を取り入れた勉強会を開催しています。また、外部研修は、県・市社会福祉協議会や日本知的障害者福祉協会主催の研修等に希望者を参加させ、内部研修に活用するなどの取り組みが行われています。 ○しかしながら、「航」全体としての人材育成計画や職員個々の職務経験、研修ニーズに基づく研修計画を策定するまでには至っていません。また、職員の経験や能力に応じた期待水準は定められていますが、管理者レベルで認識されているだけで、職員への周知までには至っていません。効果的に人材育成を行うには、施設の職員構成を考慮し、職員や管理職に期待される役割や人材育成の方法などを明確にした人材育成計画の策定が必要です。同時に、現在実施している内部研修や外部研修を、階層や職種に分けて整理し、体系的な研修計画を策定されることを期待します。さらに、職員ごとの職責や役割を明確化したり、職員のモチベーションを高めるためにも、現在ある職員の期待水準をもとに、各職員の能力や適性・経験に応じた目標を設定し、定期的に達成度を評価する体制づくりが望まれます。 ○法人理念や基本方針が職員に周知徹底されていなかったり、マニュアルの存在等についての認識が職員によって差がある等、組織全体のコミュニケーションが充分に図られているとは言えない状況が散見されました。人材育成を「航」の課題として認識されていますので、全職員が理念や基本方針に沿ったサービスを提供するために、施設長をはじめとする管理職がリーダーシップを発揮し、職員と管理職が一体となって人材育成に取り組まれることを期待します。そのためには、施設全体のコミュニケーションを円滑にし、職員がやりがいを感じる職場環境づくりが求められます。 ②業務マニュアルの見直しと共有化を ○施設では利用者の安全管理や適切な支援の実施に向け、感染症対策や事故防止、身体拘束への対応など、職員の行動規範を定めた指針・通知を多数策定し配布するほか、日常的な支援の手順を定めた各種マニュアルを整備しています。また、特に配慮を要する利用者に対しては、事故防止チェックリストを使用したり、居住ユニットごとに個別の対応手順をマニュアル化するなど、一貫性のある支援を実践しています。これらの指針や通知、各種マニュアルは、「航」内のパソコンのデータベースに保存され、イントラネット(インターネット技術を活用した施設内ネットワーク)を通じて「航」内の各部署に配信されています。 ○しかし、居住ユニットごとに作成された個別の対応手順マニュアルは、利用者の状況に応じて定期的に見直されているものの、「航」全体で共有する標準的な支援マニュアルについては、定期的な見直しが行われるまでには至っていません。衛生管理や感染症予防対策などに関するマニュアルについては、随時新しい情報を追加して整備し、安全管理に努めていますが、全体的な整合性を確認したり、「航」の実情に応じた見直しは行われていません。また、マニュアル類が「航」内パソコンのデータベースで管理されていることもあり、十分に周知されていないマニュアルがあるなど、共有化が図られていない状況も散見されました。 ○サービスの質が一定に保たれるようにするためには、業務マニュアルを整備し、共有化を図ることが不可欠です。そのためには、現状に沿った内容にし、職員に活用されるマニュアルを整備することが必要です。また、継続性のあるマニュアルを整備するにあたっては、定期的なマニュアルの見直しが不可欠です。マニュアルがより身近で、活用されるものにするためには、職員全体で見直しを実施することが望まれます。さらに、マニュアルを周知徹底するためには、マニュアルを用いて職員研修を実施するなどの取り組みも必要です。すでに、職員から意見を募り、事故防止マニュアル作成に反映した実績もありますので、これらの取り組みを拡大していくことを期待します。 ○これらマニュアルの充実に向けた取り組みを通じて、職員の資質向上、業務や情報の共有化を図るとともに、職員間のコミュニケーションがさらに円滑化することを期待します。 ③より主体性を尊重した個別支援計画の充実を ○個別支援計画は、健康面や日常生活面、コミュニケーション、社会参加、就労など7領域に分かれた施設独自のアセスメントシートに基づき利用者の特性を把握し、利用者の現状と課題、将来の展望、それぞれの課題解決に向けた長期・短期の目標が明記されています。作成した個別支援計画は、利用者・家族に説明され、利用者から同意の署名・捺印を可能な限り得ることとしています。しかし、個別支援計画の作成や見直しにおいて、利用者・家族がカンファレンスに参加するまでには至っていません。また、個別支援計画は、必要に応じて随時見直しを行うようになっていますが、状態変化の少ない利用者など、全ての利用者に対して定期的に実施するまでには至っていません。 ○利用者の自立と地域生活への移行を目指す上では、利用者自身が主体性を持ち、課題に取り組む姿勢を持つことが大切です。そこで、個別支援計画の作成・見直しにおいては、利用者の主体性を尊重するために、利用者・家族の意見や要望にも積極的に目を向ける姿勢が重要です。個別支援計画の作成・見直しに利用者・家族が参加することは、意向を正確に反映した計画となり、利用者の主体性を尊重することで、利用者・家族の満足度や信頼感が高まることも考えられます。さらに、利用者から直接意見を聴くことは、日々のコミュニケーションだけでは得られない様々な意見や要望の把握にもつながり、支援内容の振り返りの機会となるのではないでしょうか。 ○利用者のニーズに沿った個別支援を実践するためには、A(Assessmentアセスメント)→P(Plan計画)→D(Do実施)→C(Check評価)→A(Action見直し・改善)という一連のサイクルが適切に機能することが大切です。これら一連の流れを、「随時」と「定期」の両面で確認・実施するほか、2つの「A」をさらに強化することで、より立体的な支援の実現が可能になるものと考えます。また、計画の作成や見直しの際には、事前に看護師や栄養士から意見は聴いているものの、複数の職種が参加するカンファレンスを開催するまでには至っていません。今後は、更なるサービスの向上にむけて様々な職種が参加するカンファレンスを開催し、目標の達成状況やサービスの実施状況を定期的に評価し、見直すことが望まれます。個別支援計画の充実と、今後の更なる個別支援の実践に期待します。 |