金沢区 三春学園(横浜市) PDF 印刷 Eメール

総 括

評価機関名コモンズ21研究所
評価実施年月平成21年2月 ~ 平成21年3月
公表年月平成21年3
対象サービス児童養護施設
対象事業所横浜市三春学園
事業所(所在地)245-0016 横浜市金沢区富岡東3-21-19

総合評価(優れている点、独自に取り組んでいる点、改善すべき事項)

<施設の概要・特徴>

 

  児童養護施設は、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する子どもたちを受け入れる施設です。横浜市三春学園は、昭和41年、三春園と富岡学園が合併して誕生した児童養護施設です。明治23年、横浜に初めて開設された孤児入所施設から通算して119年の歴史があります。横浜の南部に位置し、周辺は閑静な住宅街で、小高い山に隣接した緑豊かな学園です。定員70名(現69名)が在籍しています。学園内には4居住区(ブロック)あり、3ブロックの大舎制と1グループケアユニット1ブロックに分かれて生活しています。「子どもの持つ力を最大限に発揮できるように、心身ともに健康で安心できる場を提供する」ことを理念にしています。

  

<特 長>

 

1.セーフティーネットとしての学園の存在・役割

 

  児童養護施設への措置決定は児童相談所が行っています。三春学園は、児童相談所から依頼される措置ケースをすべて受け入れています。児童養護施設の最後の拠りどころとしての存在であり、セーフティーネットの役割を果たしています。職員は専門性を活かし、日夜に渡り、子どもの権利を守り、健全育成に力を注いでいます。

  

2.子どもの自主性を尊重した支援 

 

  子ども一人ひとりの自立支援計画は、毎年作成されています。作成には、ブロックリーダー、児童指導員、担当保育士、心理士が参加し、児童相談所職員や学校の先生など複数の職種が関わっています。計画書には、課題を解決するための目標が設定され、支援方法が記載されています。問題が生じた時に、必要に応じて計画の見直しをしています。こうした支援体制の中で、高校生はバイク免許の取得やアルバイトをしたり、古代魚を飼う子どもがいたり、個々の子どもに応じた思慮深い対応がされています。近隣の子ども達と互いの家を訪問しあい、交流が盛んです。子ども達はのびのびと明るく楽しく、友人関係や部活動など生き生きと生活している様子がうかがえます。

  

3.児童援助計画重点課題への取り組み

 

   理念・方針に沿う当該年度の具体的な活動目標を職員全員で話し合い、児童援助計画重点課題として定めています。本年度は「感染症予防対策」「子どもの権利を擁護するための指針作成」等7つの課題を設定して、取り組んでいます。課題の一つの「ステップアップ事業開始」では、子どもがスポーツの上達を図り、集中力を高める取り組みとして、クラブに加入する費用を出しています。お絵かき教室や書道、そろばんに通うことによって落ち着きや興味が出るなど、心理士や児童指導員、保育士たちの一人ひとりの子どもへの配慮ある試みにより、入所児童の生活の質を高める取り組みをしています。また、「調理部門委託化に伴う協働と楽しい食事の推進」というテーマでは、民間委託事業者と協働して、児童に合った食の改善を進め、メニューや調理への工夫をしています。給食部会が中心になり、子どもへのアンケートや、食事マナーの改善を実施しています。本年度の児童援助計画重点課題はほぼ達成し、生活環境の向上に新鮮味や達成感が出て、職員の士気や子どもの満足を高めています。

  

4.地域との関わりを活かした自立支援

 

学園は地域に古くから存在し、子ども達は地域に溶け込んだ生活をしています。子ども達の演奏する和太鼓は、地域の祭りやイベントに招待され、その力強い演奏は参加した人々に感銘を与え、「三春太鼓」として有名です。連合町内会の運動会では、子どもたちが参加して大活躍をするなど、子どもの少ない町内から引っ張りだこです。また、ボランティアを積極的に受け入れ、学習、ピアノ、イベント、遊び、和太鼓の指導など各種のボランティア活動が有効に機能しており、子どもの生活に広がりを持たせています。これらの様々な活動は子どもの持つ力をいろいろな場面で発揮させ、自立への大きな後押しとなっています。

  

<工夫や改善が望まれる点>

 

1.専門性を活かし、地域の児童・青少年育成にかかわる家族支援を

 

学園は横浜市の児童養護施設として、長い歴史を持った施設です。施設は、地域住民にとって社会資源と位置付けられ、自らの専門性を地域に還元していくことが求められています。当施設の職員は、児童・青少年の育成に関しては、多くの経験を有し、専門性を活かした数多くの実績を蓄えています。そのノウハウを施設内だけで終わらせることなく、職員が地域の公的施設に出向いて、児童・青少年の育成に悩む多くの家庭への相談事業へ協力する等、地域の福祉ニーズに応えていくことが、今後のさらなる役割として期待されます。

  

2.快適な施設環境を 

 

 男子トイレの一部には不快な臭気があり、利用者本人調査からも訴えが出ています。快適な生活が営まれるよう、衛生管理面からも早期に解決されることを希望します。大舎制の居室は1室に4人が生活しており、プライバシーが守れる空間はありません。共有スペースであるリビングや廊下も同様です。限られたスペースですが、必要に応じて遮蔽物を設置するなど、プライバシーが確保できる空間の工夫が望まれます。

   

評価領域ごとの特記事項

1.人権の尊重

職員は、一人ひとりの子どもの健全な育成に心を砕き、家族や関係機関と連携しながら支援しています。子ども達は規律を学びながら、のびのびと暮らし、地域社会に溶け込み、近隣の子ども達と日常的に交流しています。児童・家族への支援、職員の姿勢、管理・運営の社会的責任が健全に、有効に機能していることが確認されます。

 

子どもたちに意見や希望がある時は直接職員に話をしたり、意見箱に入れることができることを伝えています。意見箱は各ブロックごとに設置され、「意見箱の説明〈みんなの意見箱〉についてお知らせ」の紙が貼られ、学園生活についての意見や不満があったら紙に書いて入れるなどのルールが分かりやすく説明されています。

 

・個人のスペースとしては、居室の中で、自分の机とクローゼットの周辺に家庭で使用していたものが持ち込めます。しかし、大舎制の居室は1室に4人が生活しており、プライバシーが守れる空間はありません。共有スペースであるリビングや廊下にもプライバシーが確保できる空間はありません。共有スペースであるリビングや廊下も同様です。限られたスペースですが、必要に応じて遮蔽物を設置するなど、プライバシーが確保できる空間の工夫が望まれます。

 

 

・神奈川県児童養護研究会・子ども集会主催の性教育研修に、職員と高校生が参加し学ぶ機会を設けています。 

   

2.意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供

・子どもの家族状況等については、児童相談所から情報を入手し、家族からの相談は児童相談所の親子面接や電話等で受け、児童相談所と連携をしながら対応されています。面会・外出、一時帰宅は規定に基づいて行われており、親子面接室を活用して、一緒に過ごしたり、調理をして食べたり、ゆっくりと面会できる体制が作られています。

 

・進路については、各寮舎ごとに子どもと話をして進路を把握した上で、学校の担任や職員の助言等を総合的に判断して志望校を決めています。学校で行われる三者面談に、家族に参加してもらうように働きかけ、参加が可能な場合は四者面談を行っています。

 

・子どもと職員で「児童部会」を組織しており、子どもが主体的に学園内の諸行事の企画と運営に関わり、学園環境の改善に取り組むよう指導しています。

 

 

・園内では漢字や算数の「段級テスト」を行ない成績の良い者に景品を出すなど学校での学習の遅れを取り戻す意欲を盛り上げる工夫をしています。ボランティア部会では心理士と連携し、つまずきの原因を探っては学習効果を上げています。 

      

3.サービスマネジメントシステムの確立

自立支援計画の中には、課題を解決するための長期目標と短期目標が設定されています。長期は2~3年、短期は1年となっており、短期目標については、支援上の課題、支援目標、支援内容・方法が細かく記載されています。また、家族に関しての長期目標・短期目標が設定されており、同様に、支援上の課題、支援目標、支援内容・方法、評価が記入されています。地域に関しても同様のものがあり、学校の先生と相談の上決めています。月1回のブロック会議の際に、問題が生じた時は、再アセスメントを行い、必要に応じて見直しています。ケースによっては年に2、3回計画を変え、児童指導員、リーダー、担当保育士、心理士が参加し、児童相談所職員や学校の先生など複数の職種が関わっています。

 

・日々の生活そのものが支援であり、会話の中から、何気なく耳に挟んで、心の発達や変化を捉え、柔軟に対応しています。ブロック日誌や指導員日誌、「子どもの月例記録」には、日々のサービスの実施状況や対応の仕方が記録されています。

 

 

・看護師が3名配置され、各ブロックを回って登校せず部屋に残っている子どものバイタルを測定してはナースファイルに記録したり、子どもの通院に付き添ったり、衛生管理や感染症に関する情報を収集し、ブロック会議や全体会議で職員に伝達、周知しています。 

      

4.地域との交流・連携

・連合町内会の運動会や町内会のお祭りに積極的に参加し、運動会ではピンクチームに入り、様々な競技で良い成績を上げ活動的な交流がされています。

 

・地区センターで行われる「バレンタインデーのチョコレート作り」や「鳥の観察」などに意欲的に参加しています。青少年センターにて2年に1回「三春太鼓」を披露しています。

 

・お祭りの準備のため、町内会の会議の場として施設の集会室を貸しています。幼稚園や保育園に、餅つき用のきね、うすや和太鼓の貸しだしを行っています。

 

 

・施設の専門性を活かした相談事業や講習会・研修会の開催、地域のニーズの把握を施設内で行うことに慎重な姿勢が見られます。施設内は難しくても、職員が地域に出て行き、他の施設と協力して取り組むなどの方法を検討されることを希望します。

5.運営上の透明性の確保と継続性

・本年度の児童援助計画重点課題の一つとして、生活部会による省エネ対策・ごみ減量化対策に取り組んでいます。給食の残渣は、ゴミの資源化に配慮し、家畜のえさの委託業者に渡しています。牛乳などの紙パックは、リサイクルシステムに乗せています。油は地域作業所に届け、石鹸の原料として提供しています。分別収集は各ブロックで取り組んでおり、ビン・缶・紙など種類別にし、収納容器に分別しています。また、職員に向けて分別の仕方の種類分けテストも行われています。

 

・施設として重要な意思決定は、「一人ひとりの子どもの身の振り方である」と施設長は述べています。職員は子どもの見立てに対して一人ひとり自分なりの考えを持っており、それをどのように一致させていくか、各職員の考え方をブロックとして統合していく作業が、日々の業務の本筋と捉えています。1ブロックに7~8名の職員による熱心な論議を結論に導き、調整を図る過程で、重要な意思決定についての十分な説明や経過をたどることになります。

 

・施設には部会活動が6つあり、それぞれテーマを決めて取り組んでいます。一例をあげると、本年度の児童援助計画重点課題の中の「子どもの権利を擁護するための指針作成」については、性教育プロジェクト部会が取り組んでいます。複数の職種によるプロジェクトチームを組み、月1回会議を開き、経過を職員会議で報告しています。性的権利侵害事故については、対応、予防、発見の視点から方策を検討することとし、対応マニュアルの作成を本年度の課題として完成させています。 

      

6.職員の資質向上の促進

5年前から要請していた「家庭支援専門相談員」が20年度から配置されましたが今年度はまだ十分機能しなかったため、来年度は業務範囲を確立し、さらに入所児童の家族の再統合や退所児童の支援に取り組むための体制を強化することを重点課題としています。

 

・園内研修は、人権研修として年2回「外国人差別」「セクシャルハラスメント」、ステップアップ研修として児童相談所から講師を招いて「心理判定書の読み方」などを実施しています。常勤・非常勤ともなるべく多くの職員が参加できるよう、シフト交代の時間を考慮しています。

 

・外部研修としては、心理士向け年5回、社会福祉士と保育士向け20回、横浜市職員研修(新任・中堅職員向け)2回が実施され、20年度は述べ111名の職員が参加しています。また、横浜市保健福祉研究発表会で研究発表を行ったり、心理士が事例検討会に参加するなど、研修体制を確立し資質向上への取り組みがなされています。

 

 

・業務に当たっては、正規職員の補助として非常勤職員が同じ業務に携わっていますが、非常勤には経験年数の長い職員を再雇用するなど、正規職員の平均年齢46歳・在職年数5.1年と合わせて、安定的な人員配置を実現しています。 

       

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