<施設の概要・特徴> 児童養護施設は、保護者のいない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する子どもたちを受け入れる施設です。横浜市三春学園は、昭和41年、三春園と富岡学園が合併して誕生した児童養護施設です。明治23年、横浜に初めて開設された孤児入所施設から通算して119年の歴史があります。横浜の南部に位置し、周辺は閑静な住宅街で、小高い山に隣接した緑豊かな学園です。定員70名(現69名)が在籍しています。学園内には4居住区(ブロック)あり、3ブロックの大舎制と1グループケアユニット1ブロックに分かれて生活しています。「子どもの持つ力を最大限に発揮できるように、心身ともに健康で安心できる場を提供する」ことを理念にしています。 <特 長> 1.セーフティーネットとしての学園の存在・役割 児童養護施設への措置決定は児童相談所が行っています。三春学園は、児童相談所から依頼される措置ケースをすべて受け入れています。児童養護施設の最後の拠りどころとしての存在であり、セーフティーネットの役割を果たしています。職員は専門性を活かし、日夜に渡り、子どもの権利を守り、健全育成に力を注いでいます。 2.子どもの自主性を尊重した支援 子ども一人ひとりの自立支援計画は、毎年作成されています。作成には、ブロックリーダー、児童指導員、担当保育士、心理士が参加し、児童相談所職員や学校の先生など複数の職種が関わっています。計画書には、課題を解決するための目標が設定され、支援方法が記載されています。問題が生じた時に、必要に応じて計画の見直しをしています。こうした支援体制の中で、高校生はバイク免許の取得やアルバイトをしたり、古代魚を飼う子どもがいたり、個々の子どもに応じた思慮深い対応がされています。近隣の子ども達と互いの家を訪問しあい、交流が盛んです。子ども達はのびのびと明るく楽しく、友人関係や部活動など生き生きと生活している様子がうかがえます。 3.児童援助計画重点課題への取り組み 理念・方針に沿う当該年度の具体的な活動目標を職員全員で話し合い、児童援助計画重点課題として定めています。本年度は「感染症予防対策」「子どもの権利を擁護するための指針作成」等7つの課題を設定して、取り組んでいます。課題の一つの「ステップアップ事業開始」では、子どもがスポーツの上達を図り、集中力を高める取り組みとして、クラブに加入する費用を出しています。お絵かき教室や書道、そろばんに通うことによって落ち着きや興味が出るなど、心理士や児童指導員、保育士たちの一人ひとりの子どもへの配慮ある試みにより、入所児童の生活の質を高める取り組みをしています。また、「調理部門委託化に伴う協働と楽しい食事の推進」というテーマでは、民間委託事業者と協働して、児童に合った食の改善を進め、メニューや調理への工夫をしています。給食部会が中心になり、子どもへのアンケートや、食事マナーの改善を実施しています。本年度の児童援助計画重点課題はほぼ達成し、生活環境の向上に新鮮味や達成感が出て、職員の士気や子どもの満足を高めています。 4.地域との関わりを活かした自立支援 学園は地域に古くから存在し、子ども達は地域に溶け込んだ生活をしています。子ども達の演奏する和太鼓は、地域の祭りやイベントに招待され、その力強い演奏は参加した人々に感銘を与え、「三春太鼓」として有名です。連合町内会の運動会では、子どもたちが参加して大活躍をするなど、子どもの少ない町内から引っ張りだこです。また、ボランティアを積極的に受け入れ、学習、ピアノ、イベント、遊び、和太鼓の指導など各種のボランティア活動が有効に機能しており、子どもの生活に広がりを持たせています。これらの様々な活動は子どもの持つ力をいろいろな場面で発揮させ、自立への大きな後押しとなっています。 <工夫や改善が望まれる点> 1.専門性を活かし、地域の児童・青少年育成にかかわる家族支援を 学園は横浜市の児童養護施設として、長い歴史を持った施設です。施設は、地域住民にとって社会資源と位置付けられ、自らの専門性を地域に還元していくことが求められています。当施設の職員は、児童・青少年の育成に関しては、多くの経験を有し、専門性を活かした数多くの実績を蓄えています。そのノウハウを施設内だけで終わらせることなく、職員が地域の公的施設に出向いて、児童・青少年の育成に悩む多くの家庭への相談事業へ協力する等、地域の福祉ニーズに応えていくことが、今後のさらなる役割として期待されます。 2.快適な施設環境を 男子トイレの一部には不快な臭気があり、利用者本人調査からも訴えが出ています。快適な生活が営まれるよう、衛生管理面からも早期に解決されることを希望します。大舎制の居室は1室に4人が生活しており、プライバシーが守れる空間はありません。共有スペースであるリビングや廊下も同様です。限られたスペースですが、必要に応じて遮蔽物を設置するなど、プライバシーが確保できる空間の工夫が望まれます。 |