〔施設の特色〕 ○ 母子生活支援施設カサ・デ・サンタマリアは、港を眺望する異国情緒豊かな居住街を通り過ぎた高台にあります。富士山やランドマーク、眼下には横浜の街が広がっています。隣接の広々とした公園の小高い丘には、四季折々に彩を添える樹木が茂り、自然に恵まれた環境です。 ○ 建物は居住者の安全性に配慮された地上4階地下1階の造りです。施設内は、木のぬくもりのあるフロアーや調度品、ガラス壁など福祉施設というイメージを感じさせないこだわりのある設計となっています。 ○ 19世紀のスペインで、疎外された女性の保護と自立に尽力したカトリック礼拝会の創立者、マリア・ミカエラの精神に基づいて1996年、児童福祉施設としてカサ・デ・サンタマリアが開設されました。母子生活支援施設と緊急一時保護事業が実施されており、現在23世帯の母と子どもが19名の職員の支援で生活しています。 ○ 「一人ひとりの存在を敬い、その主体性や意見を尊重して運営する」を施設の理念とし、カトリックの人間理解に基づく、利用者の自立に向けての支援に取り組んでいます。安心して生活を営み、心身ともに安定と調和を得て、次のステップへの成長を促すという、施設長のリーダーシップのもとに職員の専門性とチームワークで支援が展開されています。 〔特に優れていると思われる点〕 ①理念に基づく利用者の自立に向けた取り組み ○ 理念に基づき、利用者一人ひとりの主体性や意見を尊重し、「必要な人に必要なだけの支援を」と本人の心身の安定に合わせながら寄り添う支援を心がけています。一貫した支援体制を築きながらも柔軟に対応し、母子双方に最善の利益を追求しています。 ○ 利用者一人ひとりが書いた「退所へ向けたライフプラン」を基に、日々の情報をキャッチし、本人の意向を勘案しながら、自立支援計画の見直しを柔軟に行っています。母と子どもの自立への取り組みに対して気軽に相談に乗り、日々のミーティングで話し合い、情報を共有し、指導日誌に支援内容を記入しています。処遇会議・カンファレンス会議で検討し、保育士・心理療法士・嘱託医等それぞれの専門性の立場から連携を図りながら支援に取り組んでいます。 ○ 不登校児への対応としては、学校の教師と3者面談を繰り返しながら、本人の意向を大切にし通信制高校へ進学したケースがあります。母親への就労支援では、本人の意向や能力に合う就労先を見つけるため、絶えず情報収集に努め、100回以上の訪問・職探しで決まったケースもあります。また、希望者に行う「夕食提供」は、毎回30食以上の需要があり、要望に応じて調理法を指導するなど、食への関心を深める糸口になっています。 ○ 問題行動が見られる母子や配慮の必要な子どもには心理療法士や外部の講師による指導が行なわれています。母子の主体性を尊重し、就労や通学は無理強いせず、本人の安定を待ち柔軟な支援目標を設定し、寄り添う形の支援が行なわれています。 ②安心して生活できる物的・人的な環境づくり
○ 玄関を入ると清潔で広々としたフロアがあり、手入れの行き届いた熱帯魚の水槽や母子像、ガラス張りで明るい保育室や学習室、快適で文化的な設備など、心身を癒すための配慮をしています。本物志向の寄木のフローリングや、施設の歴史と共に充実してきた保育室の手作りの家具や遊具など、心身ともに安定した生活を送るための環境が整備されています。また、DV、虐待被害への対応として3室の緊急一時保護室を設置されたり、障害のある母子のためには車椅子対応の居室とエレベーターが設置され、設立以来4件の受け入れ実績があります。利用者への聞き取りでも、ほぼ全員が「施設は安心できて快適で居心地が良い」と回答しています。 ○ 子どもへの支援環境としては、学童保育、レクレーション活動・学習支援等が有効に機能しています。幼児や障害児に向けた集中力を高めるモンテッソーリ教育、グループホーム的キャンプなど各種のイベントで楽しい環境づくりを行っています。母親に対しては、母の会運営やフラダンス同好会、多彩なイベントなどを通して、楽しみながらの交流が促進できるよう配慮しています。 ○ 母親や子どもへの支援として、カウンセリングのための非常勤心理療法士3名が配置され、相談に応じています。困った時の補完保育・病時保育・通院補助等で母親の負担軽減を図っています。また、日々援助技術を磨くべく、職員に向けた施設内の定期的スーパービジョン研修、年31回の外部研修(法人の海外派遣研修含む)を通し、日々の支援に生かしています。設立後12年を経てバランスの良い人員配置が実現し、若い職員は経験豊かな職員からスーパーバイズを受け、理念に沿って意思統一された職員体制が構築され、チームワークで課題解決に取り組んでいます。 ③地域の福祉拠点としての役割を担う取り組み ○ 地下に交流スペースとして大ホール(カラオケ・ピアノ含む)、談話室、調理室を設置し、地域に開放しています。地区連合町内会長、民生委員児童委員、老人会長、地区社会福祉協議会長などの代表からなる利用調整委員会を組織し、自主運営をしています。年間のべ151件2,842名の利用がされています。更に、備品の貸し出しや応急備蓄整備指定施設として災害時の食料や防災道具を備蓄して地域のニーズに応えています。 ○ 区の地域子育て連絡会に参加しネットワークの一員として活動しています。県警の地域安全課と協力して不審者情報ネットワークのための防犯協力体制を作っています。最寄の交番には勤労感謝の日に学童の手づくりクッキーをプレゼントし、日頃の協力に対して感謝しています。地域の学校とは年1回懇談会を持つだけでなく、学校行事や施設行事に指導員や担任が互いに訪問し合い、日ごろから信頼関係を作り、連携をとりながら子どもの指導にあたっています。 ○ 施設に隣接して眺望のよい公園があり、多くの地域住民や子どもたち、施設の学童の遊び場として活用されています。町内会ではバザーやお神輿などのイベントを通して盛んな地域交流があります。また、施設が行う「餅つき」には地域住民も含めて毎年80~100名の参加があります。地域と共に歩むという施設の開設以来の取り組みが12年の歳月を経て地域に浸透し、福祉拠点としての役割を着実に広げています。 〔特に工夫や改善などを期待したい点〕 ①ヒヤリハットなど安全に対するきめ細やかな取り組みを ○ 事故記録のデータがあり、原因・対応策の検討結果の記録が取られていますが、子どもがはしゃぎすぎて、ドアに顔をぶつけるなどの小さな事故やヒヤリハットに対する記録は取られていないようです。小さな事故も大きな事故への予見につながります。ヒヤリハットの事故記録として、記載・整理し集計することにより、この事故は何時ごろに起きやすいか、何歳ぐらいの子どもに、どんな事故が起きるかなど統計・分析することも大切です。事故を未然に防ぐ対策も可能となり、より安全な運営体制が図られることになります。 ②具体的な例示等による確実な取り組みを ○ 体罰やセクシャルハラスメントに対する禁止は、福祉に携わる職員としては、当然のこととして認識されています。また体罰等の禁止を徹底するために、施設長は日常の中で、言葉の暴力も含め職員の言動を注意したり、ミーティング時にも確認しています。今後は、具体的な例示集や処分規定の整備など、よりお互いが確認し合える仕組みづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。 |