春光学園(社会福祉法人春光学園) PDF 印刷 Eメール

総 括

評価機関名 コモンズ21研究所
評価実施年月 平成211月 ~ 平成214
公表年月 平成215
対象サービス 児童養護施設
対象事業所 社会福祉法人春光学園 春光学園
事業所所在地 〒238-0026 横須賀市小矢部2-14-1

総合評価(優れている点、独自に取り組んでいる点、改善すべき事項)

【施設の概要】

 

児童養護施設・春光学園は、太平洋戦争終結後の昭和2012月に、戦災孤児の養護と福祉を目的に設立されました。現在は定員85名(218歳)の子どもたちの生活の場であり、居住スペースは、幼児寮・男子寮・女子寮の3つの寮からなる大舎制となっています。子ども達はここから幼稚園や学校に通っています。JR横須賀線「衣笠駅」から徒歩10分程度、地域の商店街に近接し、周辺には一般住宅も多く、海に近い静かな環境の中に位置しています。

 

地域行事を通じた地元町内会との交流はもとより、戦後に設立された背景から、米軍横須賀基地や防衛大学校との交流も盛んに行われています。また、ボランティアの協力をはじめ、地域の企業・学校・個人等からも多くの支援が寄せられています。

 

「雨風に負けず、たのしく働き、隣人を愛する人になる」という園誓のもと、「安全・安心な生活の確保と、心身の健やかな成長・社会的自立を支援すること」を基本理念として、日々子どもの健全な成長を見守り、社会性と自立心の獲得に向けた支援を実施しています。

  

【特に優れている点】

 

. 子どもの支援に関する多面的な検討と情報共有の仕組み

 

当施設では、子どもの支援を検討するにあたり、カンファレンスを開催して、複数の職員の意見を盛り込み、多面的に検討しています。

 

子どもの自立支援計画は、子どもの意見や要望を加味した上で、担当職員を中心に各生活寮の主任などの意見を盛り込み、統括主任・施設長の確認を踏まえて作成することがルール化されています。施設長の「ケースカンファレンスは寮任せにしない」という方針のもと、複数の職員がカンファレンスに参加し、職員間で支援内容を共有するなど、組織的な支援体制を構築しています。

 

  また、子どもの家庭復帰や問題発生時など、状況に応じて「ネットワークミーティング」を開催し、子どもの取り巻く様々な課題や課題解決に向けた支援方法の共有化を図っています。「ネットワークミーティング」には、児童相談所の職員や学校関係者など、子どもの直接処遇に当たる関係者が複数参加するほか、保護者も参加して、統一した見解のもと、より適切で多面的な支援の実現に努めています。

このように、子どもの意向を尊重し、関係者の様々な観点から支援内容が検討され、共有される仕組みは、特に優れています。

  

. 「食」を重視した生活支援の取り組み

 

当施設では、子どもの健全な成長に向け、「食」を大切にした支援に取り組んでいます。

 

入所児童の食生活の向上を目指して、「給食委員会」を発足し、毎月定期的に食事内容を協議・検討する仕組みがあるほか、年2回の嗜好調査を実施したり、「リクエストメニュー」として、毎月、栄養士が直接子どもの希望を聞き、食事メニューに反映するなど、積極的に子どもの要望把握に努めています。子どもの好みや年齢に合わせ、味付けを2段階に分けているほか、幼稚園児には手作りのお弁当を提供するなど、細やかな配慮と対応がなされています。

 

「食育」に関しては、今年度から「食育事業計画」に基づき「料理・お菓子作り体験」が定期的に開催され、食事への興味・関心を高めるとともに、子どもの協調性や実生活に役立つ調理実習の機会となっています。また、「食育年間計画」に沿って月ごとにキュウリやトマトなどの野菜を育て、水やりや草むしり、収穫などの体験を通じて食べ物の大切さを考える機会を確保しています。子どもの聴き取り調査においても、食事内容に対する満足度は高いことがうかがえました。

  

【改善を期待したい点】

 

1. より快適で家庭的な生活環境の実現を 

 

国の方針で、小舎制の導入など、個別的なケアが推奨されており、当施設でも中高生に対しては個室や小人数構成の居室を提供するなど、個別ケアに向けた取組を進めています。

 

 

しかし、居住スペースの空調管理や採光、清掃状態など、施設内の快適性確保が課題となっています。また、子どもの聴き取り調査からは、現在の入浴回数や食事時間制限等、生活上のルールが多いことに関する要望も出ています。快適な生活環境は、子どもの健康や心身の健全な育成には大変重要です。今後は、快適で家庭的な生活環境の確保に向け、子どもたちとの意見交換をしながら、ハード面・ソフト面共に、施設生活の再点検をすることを期待します。また、今後は、幼児寮においても個別性を尊重し、家庭的な少人数ケアの実践に向けた取組を進めることが望まれます。

  

2.さらなる援助技術向上に向けた、支援手順の体系化とより専門的な研修の実施を

 

 

今年度に新施設長が着任し、早速、衛生管理や危機管理などのマニュアルや「預り金管理要領」を新たに整備したところです。しかし、子どもの日常的な支援マニュアルや処遇マニュアルはまだ作成されていません。アセスメント(課題分析)シートも、標準的な様式がありません。子どもに対する支援内容の差異を是正し、今後は、寮ごとや職員によって、差の出ることの無い支援を実施するために、標準的な支援の手順を定めることが期待されます。

 

 また、不適切な関わりの防止については、対策としての職員研修や具体的な体制の構築が不十分です。今後は、問題行動の改善に向けた援助技術の研修の実施や支援技術を積極的に取り入れる等して、さらなる専門性を身に付ける努力をし、新施設長のもと、職員は一丸となって、子ども本位の支援のために、今後も取組を進めていくことを望みます。

 

 3.感染症予防とまん延防止の対策と衛生管理意識の向上を

「衛生管理マニュアル」には、手指洗浄等の方法が記載され、「感染症対策マニュアル」には、感染症発生時対応についての記載がありますが、いずれも「感染症予防」についての記載がありません。各生活寮における子どもの生活において、また職員の支援場面においても、感染症予防及びまん延防止について、施設全体としての衛生管理意識の向上が求められます。各生活寮の洗面台などの共用のタオルについては、施設内感染予防のために、個別タオル、ペーパータオルやジェットタオルの導入等の早急な改善が望まれます。また、感染症まん延防止のために、今後は静養室を活用する等して、感染症に罹患した子どもの隔離の検討をすることが求められます。

   

評価領域ごとの特記事項

1.人権の尊重

・各寮ごとに「子ども会議」を定期開催し、子ども同士が話し合いを通じて、自主性・主体性を養うことが出来るよう支援しています。   

・子どもの思想や宗教は自由で、施設は特段の関与を行わないほか、施設独自の「子どもの権利ノート」にも、思想・考え方の自由の保障を明記しています。しかし、「生活のしおり」やプライバシー保護に関する明確な保護規定やマニュアルは策定されておらず、早急に改善が望まれます。

  

・体罰に関する研修の定期的な開催や、体罰を必要としない援助技術について、具体的に指導内容・方法が設定されていません。今後は、体罰の具体例を列挙して具体的に提示したり、体罰や不適切な関わりについての基準を明確化して、職員間で共有を図ることが望まれます。

  

・体罰等不適切な行為があった場合の報告体制や対応手順を明確化したマニュアルの整備や、その内容のルール化・共有化までには至っていません。今後は、報告手順等を明確化し、体制整備を図るほか、職員相互に援助技術や指導方法を確認したり、点検を行う機会を設定する等の取組が期待されます。

  
2.意向の尊重と自立生活への支援に向けたサービス提供

 ・施設事業計画の基本方針において「児童の最善の利益確保」を明示し、年度の重点課題として「子どもの人権配慮と個別支援の向上」を掲げ、子どもの利益を最優先することを基本的姿勢として定め、職員会議等で話し合うなどして、職員間での共有化に努めています。  

・入所児童に対し定期的に食事メニューのアンケートを実施、月1回定例で給食会議を開催し、施設内の食生活向上について検討を実施しています。子どもの日やクリスマスなど、季節行事ごとに行事食を提供しています。また、「リクエストメニュー」を毎月実施し、子ども一人ひとりの意見を聴取して適宜メニューに反映しています。また、子どもの食育に力を入れ、「料理・お菓子作り体験」を定期開催しています。

  

・現在、施設内において、子ども同士のいじめや、子ども間の支配・被支配関係が発生していることが大きな改善課題となっていますが、施設職員全体での課題の共有化や、体罰を伴わない支援の実践に向けた意識の徹底が不十分です。今後は、施設職員全体で問題を共有し解決する仕組みを構築し、問題行動のある子どもに対し、体罰を伴わない援助技術の研修機会を確保するなど、個々の職員のスキルアップを図る取組が望まれます。

  
3.サービスマネジメントシステムの確立

 ・施設内に意見箱を設置し、日頃から、子どもの意見聴取と要望把握に努めています。また、苦情・要望解決責任者や担当者を定め、施設の第三者委員、権利擁護機関の連絡先とともに施設内に掲示しています。施設パンフレットにも苦情解決の流れを明記し、子どもへの周知を図っています。  

・苦情解決委員会を設置しており、1回定期的に開催されています。寄せられた子どもの要望や意見は定期的に検討し対応を行い、蓄積し、また苦情・要望の対応結果を掲示し、「子ども会議」等を通じて入所児童に説明を実施しています。今後は、改善に向けた苦情解決の仕組みを十分機能させるとともに、対応結果についての説明の過程を重視し、子どもの理解・納得を得られる配慮を期待します。

 

また、蓄積した苦情や要望のデータの分析をすることによって、それらの再発防止、予防的なシステムの構築へとつなげることが期待されます。苦情解決委員会に、職員だけでなく、第三者委員に参加してもらう等、また、報告書を第三者委員に定期的に提出する等、第三者委員の活用により、透明性を高めるとなおよいでしょう。

 

  ・平成14年より第三者評価を導入し、業務改善に向けた取組を行っています。横須賀市が中核市となってからは、県としては実施しなくなったため、施設独自に外部評価を実施する等、サービスの質向上に意欲的な姿勢を持っています。改善課題に対しては、幹部職員による運営会議や、全職員参加の職員会議で検討・協議され、適宜実務に反映しています。

・具体例として、平成21年度から心理職、看護師の常勤配置を実施予定としている他、感染症や危機管理等の安全管理マニュアルの整備等が改善されました。

  
4.地域との交流・連携

 ・米海軍横須賀基地や地区町内会との交流が盛んで、地元企業や学校、NPO団体など数多くの団体・個人からも寄付や招待などの協力を得ています。地域の要望に応じて施設機能を提供するほか、法人ホームページ等により施設情報を積極的に発信しています。施設併設の相談事業「家庭養育支援センター」を運営し、地域住民からの育児相談や情報提供、里親養成啓発なども実施しています。子どもの成長と地域交流の促進・施設理解を図ることを目的に、ボランティアの受け入れも随時実施し、遊びや学習補助等のボランティアを多数受け入れています。  

・横須賀・三浦地区の児童相談所・学校等関係機関との連携から、要望・意見を聴取し、施設の実施事業への反映に努めています。また、更なる地域貢献を目指し、小規模児童養護施設(グループホーム)の設置などについて地元横須賀市への意見具申や協議が行なわれており、早期の実現が期待されます。

  
5.運営上の透明性の確保と継続性

 3つの園誓のほか、職員が守るべき規範として全9条からなる「職員倫理綱領」があり、第1条に、子ども一人一人の人格と人権の尊重を掲げています。また、施設理念は「子どもの権利擁護を基本とし、児童の安全・安心な生活を確保し、心身ともに健やかな成長と児童の社会的自立を目指した支援を行うこととする」と明記されています。  

・施設長は「児童養護施設春光学園管理規程」や「業務分担表」で役割を明確に規定しています。また、児童福祉法及び児童虐待防止法について、改正点を踏まえて職員に説明し、周知と理解浸透に努めています。

  

・理念や基本方針・職員倫理綱領については施設長が職員会議で話をし、理念は食堂に、職員倫理綱領は事務室・施設長の部屋等に掲示してあります。しかし、未だ職員全体や子どもには周知不足です。今後は周知方法を検討する等、周知と理解の促進が望まれます。

  
6.職員の資質向上の促進

 ・施設長による面接が実施され、個々の職員の就業状況や意向の把握に努めています。把握された課題は、施設長や統括主任を交え、三者面談を実施するほか、職員会議等で話し合われています。  

・複数の福祉系大学・専門学校から、保育士の実習受け入れを随時実施しています。実習生受け入れマニュアル「保育士等の養成のための実習の手引き」を作成して、円滑な受入体制を確保しています。児童養護施設が「子どもの生活の場」である特色を活かし、児童養護施設の機能の理解と、保育士業務の意義・役割についての指導を行っています。今後は、実習プログラムの策定が期待されます。

  

・職員の要望や支援実施上の必要性に鑑み、平成21年度から心理職や看護師の常勤採用を予定しています。しかし、計画的な職員の採用は実施されていません。今後に期待します。

  
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